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一つの企業で勤め上げるか副業を持って働くか ―昔ながらの田舎の働き方に学ぶ―

日本では、昔から一つの企業に勤めあげ、定年を迎えることが幸せな人生を送るための要件の一つとして挙げられてきました。

 

一方、最近では、本業はそこそこに、副業収入を得てよりよい生活を送ることが重要であるといったコメントを見かけることも多くなり、ある意味ブームのようにもなっているようです。こうしたブームは、最近の時代の流れによって生まれた“新たな価値観”であると言われています。

 

それは本当でしょうか?

 

田舎では副業を持っているのが当たり前

私は熊本県の片田舎で生まれ育ったのですが、そもそも昔から田舎の大多数の社会人は本業以外にもいくつかの副業を抱えていたように思います。むしろ、都会に出てきて副業をしない人が多いのに驚いたぐらいです。

 

この点について、『田舎で起業! 』の中で田中はこう述べています。

 

リスク分散の手法は、田舎の伝統としてある。田舎では、色々な仕事を行うのが当たり前だ。農家は、米だけでなく野菜もつくれば畜産も行う。山仕事や土木仕事、出稼ぎもある。春先は山菜を採って出荷し、夏は他人の畑を手伝い、役所の仕事も少し手がける、といったやり方は少なくない。

(中略)

だから新規の事業でも、一つの仕事だけを収入源にしようと思わないで、多様な仕事を請け負うことも考えてよい。以前の仕事を少し残す。配偶者が別に勤める。SOHOも可能だし、代理店業務を引き受けることも考えられる。学習塾を開いたり、農閑期だけの仕事もある。あまり最初から、専門分野に特化しない方が無難だ。

 

私の父は正社員でしたが、春と秋には実家の米農家を手伝っていましたし、他の会社に応援として呼び出されることも少なくありませんでした。

 

また、母も自営業のかたわら、パートやアルバイトで仕事をしていた時期もありました。最近では、「ランサーズ 」のようなライター募集サイトにハマって、副業ライターとして活動しているようです。

 

私自身もお世話になったことがあるため、「ネット環境さえあれば田舎でも仕事ができる」と母にすすめたのがきっかけでしたが、思いのほか文章を書くという仕事が向いていたのかもしれません。

 

このように、田舎に住む多くの人は副業と本業という区別がついていないか、そもそも副業をしているつもりなどなく“お手伝い”をしている感覚の人が多かったように思います。ですが、仕事の対価として収穫物や収入を得ている以上、それは立派な副業と言えるでしょう。

 

私自身も、ブログ収入、カルチャースクール講師、カウンセリング相談、先ほどご紹介したランサーズ の匿名ライター、知人のWebページ制作補助やそのコンサルタント、日雇いバイトと、複数の仕事をしています。

 

正直、どれが本業とは区別がつきません。でも、それはなんら不思議なことではありませんでした。田舎で育った私から見たら、最近の副業重視の流れは働き方の価値観が変わったのではなく、働き方の価値観が従来的な日本のスタイルに戻ってきているだけではないかと思えるのです。

 

個人がマルチな働き方をするということ

ここで言いたいのは、「だから正社員一本で働く必要はない」とか、「1つの会社に勤めあげるなんてナンセンスだ」という話ではありません。

 

重要なのは、一人の人間がいろいろな働き方をするなんてことは、今さらメディアでことさらに取り上げられるようなものではなく、ただの昔ながらの働き方の選択肢の一つでしかないという話です。

 

「会社に勤めながら空いた時間を使って副業ライフ!」なんてメディアで改めて取り上げられると、それがさも新しいものであるかのように、あるいは一時の流行りのようにも感じてしまいますが、そんなに奇抜なことをしているわけではありません。

 

副業をするとは、良くも悪くもただの選択肢の一つであり、堅く身構えるほどのことではないのだと思います。

 

正社員が副業をしても良いの?

ただ、そうは言っても就業規則などで縛られている以上、副業を持った働き方なんて最初からできないではないかという方もいらっしゃるかもしれません。実際、産業カウンセラーの相談事例でも副業に関する相談は少なからずあります。

 

でも、そもそも就業規則で個人の働き方なんてものを縛ることはできないのです。

 

たとえば、以下の法律事務所によると、就業規則で兼業を全面的に禁止することは不合理であるという裁判結果が出ていることが示されています。

 

裁判例は、従業員が就業時間以外の時間をどのように過ごすかは従業員の自由に委ねられているのが原則であり、就業規則で兼業を全面的に禁止することは不合理であるとの前提に立っています。

 

このため、就業規則における兼業禁止規定は、それ自体が直ちに無効となるものではないものの、就業規則によって禁止される兼業は、会社の企業秩序を乱し、労働者による労務の提供に支障を来たすおそれのあるものに限られるという判断が一般的です。

近江法律事務所 | どうする?従業員の副業

 

もちろん、「副業の疲労などによって本業の業務遂行に支障が出た」「本業の業務中に副業を行った」というように、本業の会社の秩序を乱すようなマネは慎む必要がありますが、それを除けば、そもそも個人の働き方、ひいては生き方を縛るものはないのです。

 

まとめ

最近では、まるで副業をしながら生きることがブームであるかのように取り上げられていますが、そもそも正社員として一本で働いていくという生き方も、副業をしながら働いていくという生き方も昔の日本にはどちらも存在していたものです。

 

いずれの選択肢が正しいとか間違いであるといった話ではありませんし、優れているとか劣っているという話でもありません。

 

ただ、副業をしながら働いていくという生き方が一時のブームとして取り上げられるというのは少しさびしいようにも思いますし、このままブームとして終わってしまう可能性すらあります。副業をしながら働くという行為は、見方を変えれば昔ながらの伝統的日本の働き方の一つでしかないのです。

 

今一度、こうした二つの日本の伝統的な価値観や働き方を比較してみて、自分にはどちらのほうが合っているのか、自分はどうやって働いていきたいのかを考えてみてはいかがでしょうか。