PC作業する人は職業病の「うつ病」に気をつけよう―生活スタイルの対処と改善の話―

PC作業の多い人に特徴的な“職業病”というものがあります。それは例えば、肩こりや腰痛、目の疲れといった具合に身体的症状として現れることもありますが、一方で、生活スタイルや作業スタイルから来る精神的症状も重要な問題だと言えるでしょう。

 

そこで今回は、産業カウンセラーである私が、PC作業を主にする人たちの抱えやすいメンタルヘルス問題とその対策について、個別に、できるだけ簡単にご紹介していきたいと思います。

 

エンジニアなどが訴える精神的症状

PCで主な作業を行う人たちの代表的存在として、エンジニアを思い浮かべる人は少なくないでしょう。以前からエンジニアのテクノストレスなどが訴えられてきましたが、最近ではそこから一歩進んで、エンジニアの“うつ病”が問題として取り上げられることが多くなってきました。

参考: エンジニアのうつ病と職場のメンタルヘルス事情|【Tech総研】

 

ネットで見る意見としては、エンジニアが激務であり、睡眠などが不足しがちなことが原因であると考えられる傾向にあります。それは1つの原因ではあるでしょうが、それがすべてとは断言できません。

 

ここではエンジニアに限定せず、PC作業をする人がなぜうつ病になりやすいのか、その生活上の問題を中心として挙げ、改善しやすいものに関してはその対処法を示すことにします。

 

PC作業をする人が抱えやすい生活上の問題

不規則な生活スタイル

仕事上どうしても仕方なく不規則な生活スタイルになりがちという人ももちろんいますが、PC作業を主にする人は自然と生活スタイルが不規則になりがちです。ちなみに、生活スタイルが不規則であることと睡眠が不足していることは同じではありません。

 

睡眠量が十分であっても、生活スタイルが不規則だとその効果を十分に得られないことがあります。特に、深夜二時ごろには就寝していないと、成長ホルモン(20代以降は老化防止ホルモンとして働く)が分泌されにくくなり、様々な問題を発生させます。

 

PC作業をする人の生活スタイルが不規則になりやすい原因の1つは、PCの強い光で睡眠時間が遅れてしまいがちなこと。また、インターネット上ではそれほど時間の感覚が強くないことなどが挙げられるでしょう。

 

1つの対処方法は、できるだけ決まった時間に決まった生活をするよう意識し、実際に自分で変えていくという意識的な対策ですが、これにも限界があります。寝る直前までPCで作業しなければならないという人もいるでしょう。これによって、入眠時間が後へ後へと延びていく可能性があります。

 

以前は、「寝る直前にはPCやスマホなど電子機器類を使わない方が良い」と言われてきましたが、最近では「寝る直前に使っても良いが、できるだけ画面の明るさを落とし、画面から離れて使うよう注意する」という主張も出てきたようです。

詳しくはこちら→寝る前にパソコンやスマホを見ても睡眠の質は下がらないらしい

 

後は、朝目覚めた時に必ず太陽の光を浴びて、体内時計を一度リセットし直すと言うのも有効です。私たちの身体は毎日毎日、体内時計をリセットし続けているのですが、このタイミングが遅れてしまうと生活リズムまで崩れてしまいます。

 

こうした意識的な対処と物理的な対処の両方で安定した生活スタイルを目指しましょう。

 

運動不足

運動不足が精神的健康に及ぼす影響は絶大です。世間では心身相関についてあまり重視されませんが、最近では医学、心理学を通して心身の関連性の深さが再認識されてきています。

 

たとえばうつ傾向が強い人は、前かがみで顔を下に向けた、文字通りの“落ち込んだ姿勢”を取りがちであることが分かっています。一方で、そうした姿勢をただし、頭を上に上げさせると、私たちの気分がポジティブになることも報告されているのです。

詳しくはこちら→ 動きが心をつくる 身体心理学への招待

 

このように、身体の調子や状態はそのまま心的な調子として現れてきます。作業に疲れた人を昼休みに自然のある公園で散歩させただけで、ストレスが低下しただけでなく、午後の作業量が低下しなかったという結果も報告されています。

 

特に運動不足になりがちな人たちは、意識的にこうした運動の時間を設けることが大事です。その際、自分の好きな音楽を聞いたり、自然の中で運動したり、姿勢を正してヒザを大きく上げて散歩できるとより効果が高まるでしょう。

 

睡眠不足

生活スタイルが不規則なこととは異なり、睡眠不足に陥りやすい人はPC作業以外にも何らかの原因があることが多いでしょう(仕事が忙しいなど)。そのため、今すぐの改善とはいかないかもしれません。

 

ですが、睡眠不足は確実に私たちの精神的・肉体的健康をむしばんでいきます。適切な睡眠時間は6.5~7.5時間だと言われますが、これを下回るとストレスの増加によるうつ病の発症、免疫能力の低下、食欲が増えて肥満になりがちetc……といった問題が発生します。

詳しくはこちら→研究成果の紹介

 

エンジニアの職業病の1つに“肥満”がよくあげられますが、これは単に運動不足というだけでなく、睡眠不足によるものもあります。肥満は特に女性においてボディイメージを崩してしまい、多大なストレスをもたらす要因になり得ます。

 

生活スタイルや運動不足の話で挙げた対策によって、睡眠の質を上げることはできますが、根本的な対策とは言えません。対処療法としては、昼寝の時間を一日15~30分、15時までに設けると、ストレスや疲れがかなり低下することが分かっています。また、夜の睡眠の質も昼寝によって向上するようです。

詳しくはこちら→ 8時間睡眠のウソ。

 

物理的、社会的な制約のために改善方法を挙げにくい問題ですが、こうした対処療法などによって対処をしていくしかないでしょう。ただし、睡眠不足が秘める問題が大きいことは認識しておく必要があります。

 

対人関係の問題

「人間には1人の方が楽な人もいる」と言う方もいらっしゃいますが、大多数の人間は人間関係を上手く作ることによって、精神的・肉体的健康を保ちます。

 

統計的に見れば、親密な友人がいない人よりもいる(と認識している)人の方が、恋人がいない人よりもいる人の方が幸福感を感じやすいのです。実際、カウンセラーが受ける職場のトラブル第一位は男女問わず人間関係の問題であることが報告されています。

 

これは、本人のコミュニケーションスキルの問題である場合、職場の雰囲気の問題である場合と様々な場合があるので、一概にこうと対処法が言えるものではありません。ですが、PC作業を主にする人は、対人関係の質以前に、他者との関わりそのものが少ないことも事実です。

 

これに関する1つの対処療法としては、職場関係以外の人間関係を作ることが挙げられるでしょう。人間は、たくさんの社会的カテゴリー(家族、職場、趣味の場etc……)に所属しているほど精神的健康が低下しにくいことが分かっています。これは1つのカテゴリーで問題が発生したとしても、他のカテゴリーで精神的健康を維持できるからだとされています。

 

他にも、動物と触れ合うことは、他者との親和欲求を満たしてくれる効果があることも報告されています。本当に緊迫した問題を抱えている人は、転退職を考えるなり、薬物療法をするなりの対処が必要でしょうが、対処療法として知っておいて損はないでしょう。

 

ちなみに、「ツイッターやフェイスブック、ブログには友達がたくさんいる」と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、直接の人間関係の代替物そのものにならないことは覚えておいた方がいいでしょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。職場勤め、フリーランスに関わらず、陥りやすい生活スタイルの問題を出来るだけ丁寧に取り上げたつもりです。基本的に、ここで取り上げた対処は研究知見に基づいたものばかりですので、大多数の人には参考になるかと思います(“全ての人に”ではない)。

 

いずれにせよ、多くの人は“今”収入を得たり、“現在”を生きることしか考えない傾向にあります。ですが、それがどんな職業であれ、今後一生を付き合っていくつもりであれば、無理のない範囲で健康を維持できるように心がけることが重要です。

 

特に、フリーランスや個人事業主の人などは、「自由であること」や「時間に縛られないこと」を誇りであるかのように言う方が多いですが、ある程度は時間や社会に縛られないと、むしろ長期的には不健康な生活を送ることになりかねません。

 

今一度、自分にとって何が重要か、どうすればより良くなれるかについて目を向けてみてはいかがでしょうか。

 

どこかで見た・聞いた・体験した!SEあるある四方山話?SE100人に聞いた今どきのSEの生態

どこかで見た・聞いた・体験した!SEあるある四方山話?SE100人に聞いた今どきのSEの生態